バケモノの涙

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本来存在しないバグもの。 「デカいな……」 その容姿と相まってバケモノと呼ばれている。 蔵人とカサドが駆けつけた時に数名が挑んでいたが、 「ウガォォォーーーッ!」 バケモノに一蹴され、この世界から消えた。 蔵人は早々に上段の構えを取り、 「悪しき者のみ焼き尽くせ、炎舞」 刀に炎を纏わせ振り下ろした。 炎は鳥のように舞い、バケモノを包み込む。 だが、 「全く効かないのか」 白い長毛を焦がすことすら出来なかった。 「カサド、頼む」 「しゃあねぇなー」 カサドは合掌を組んで目を閉じ、 「一体のみを見極める、千里眼」 呪文を唱え、再び目を開いた。 「左脇下に小さな黒子がある、その二ミリ下だ」 「了解、上げてくれ」 「しゃあねぇなー、貸しだぜ」 カサドはバケモノに向かって走り出し、蔵人は低く身構え、切っ先を左脇へと向けたまま腰の位置から深く引いた。 「おりゃーっ!」 カサドは走り出した勢いのまま三メートルほど飛び上がり、バケモノの左二の腕に拳を突き上げた。 脇の下が空き、小さな小さな黒子が現れる。 「狂えば罰、貫け雷突き!」 蔵人は飛び、切っ先は黒子の二ミリ下を捉えて雷鳴を上げる。 「うぉぉぉぉー!」 雄叫びと共に刀はバケモノの体を貫いた。 バケモノは時間が止まったように、月を見上げて動かなくなる。 蔵人が地面に着地すると、 「やったな」 カサドが駆け寄り、バケモノの行く末を二人で見守る。 月を見上げたまま、バケモノは静かに目蓋を閉じた。 同時に、一粒の紅い涙が零れ落ち、その落下に合わせるように体は塵となって消えていく。 全てが消え去り、涙だけがカランと音を立て二人の足元に転がった。 蔵人はそれを拾い上げ、 「ルビーみたいだな」 月明かりに透かしながら、超レアアイテムを緻密に確認する。 「ルビーなんかより遥かに価値あるぜ」 カサドが笑顔を見せた時だった。 「悪いが、そのバケモノの涙は渡してもらうぜ」 背後にほくそ笑む男が立っていた。
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