バケモノの涙

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「おい、クラピド!」 カサドが蔵人の肩を揺するも、心がどこかに飛んでしまって返事はない。 「ちっ、ヤバいな。 こいつが居なけりゃこの先厳しいだろうし……」 カサドは渡されていたバケモノの涙を一瞥した。 「しゃあねぇかー」 カサドは渋々とバケモノの涙を蔵人の胸に当て、 「一体のみ見極める、千里眼」 心の中を覗き込む。 『人を殺した、人を殺した、人を殺した…… 俺は殺人者、俺は殺人者、俺は殺人者……』 「これだな」 カサドは大きな溜息を一つ吐き、 「この罪悪感を吸い取ってくれ」 バケモノの涙が蔵人の胸の上で月明かりよりも輝き、 「勿体ない使い方だよな」 カサドがもう一つ溜息を吐いたところで輝きは止まり、バケモノの涙は紅から漆黒に変化した。 「俺……」 蔵人の意識が戻る。 隣にある死体を見やるが、特に反応はない。 「お前のせいでバケモノの涙が台無しだ」 「それって願い事が叶うのか?」 罪悪感を取り除かれた時の事は鮮明に覚えていた。 「あぁ、大きさによって叶えられる願いのレベルも変わるがな」 「お前、それを手に入れるために…… なぁ、お前の願い事って……」 蔵人は先程気付いた事で大方の予想はついていた。
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