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あの日の記憶
「女神族の皆様、どうなされたのですか?
こんな辺境の森にお越しになられて
人間の方達までお連れになって」
「妖精族の者だな?」
この世界を作りし創世神が消えた
平和で均衡が保たれていた世界に、緊張を与えた
魔神族と女神族は生来仲が悪かったが、この出来事により、より緊張が高まった
両者とも聖戦の準備を着実に進めていっていく中
ドルイド族と妖精族はどちらの陣営につくか岐路に立たされていた
ドルイド族は人間や女神族と親しかった
魔力の質が女神族に近いので、妖精族よりは贔屓され、扱いも人間と同等に近かった
故に女神族の方に味方すべきだという意見が多かった
妖精族は生まれて間もなかったので、ドルイド以外の種族とさほど交流を持っていなかった
しかし、魔力の質がドルイド族よりもより魔神族に近く、
過去に妖精王が魔神族の王と交流したことがあり、魔神族に協力すべきだという意見が上がった
しかし、どちらの種族も戦闘に秀でた者は少ない
妖精王とドルイドの長は中立の立場に身を置くことに決定し、二種族で共にこの状況を平和的に乗り切ることを誓った
女神族がそれを許せば、の話だったが
ドルイド族も妖精族も、まだ人間の住む場所にほど近い場所で暮らしていた
故に攻め入りやすい環境だった
ドルイド族の里が、炎に包まれる
仲間の悲痛な叫びが里中に響き渡る
力の弱いドルイド族は僅かな数が密かに生き残る程度にまでなった
その圧倒的力差に生き残った彼らは女神族や人間の目につかぬよう、
魔力を隠し、人間として振る舞うしか方法が見つからなかった
ドルイド族が簡単に制圧されたことに勢いづいた人間と女神族の軍は、そのまま妖精族の森に攻め入る
「何……故?なぜなのです…か女神様……?」
「貴様ら妖精族はドルイド族と共に、中立という立場を取ろうとしたようだな
中立?笑わせるな
魔神族に加担し我らに仇なす邪悪な存在め!
ドルイド族と同じように全て滅ぼしてやろう!!」
「な……?!そんな…ドルイド族が……?」
「どうした、妖精族の戦士はこの程度か?
ドルイド族よりは楽しめたが終わりだ」
トドメの一閃
「ガハッ?!」
よりも早く、女神族を貫く茨
「動ける者は全員森の奥へ避難を
大樹の所まで行けば安全だから」
花を呼び出し素早く仲間を回復させる
多くの仲間が倒れている
起き上がらない仲間のほうが多い
「エルニ様!!」
「エルニ様大変です!ドルイド族が……」
「話は後で。早く逃げて」
「しかし、エルニ様…そのお怪我では…!」
既に別の場所で女神族と交戦してきたようだ
全身にかなりの深手を負っている
立っているのが不思議なくらいだった
「アタシに構わないで早く行って」
「き……様…我らを女神族と知っての行動か?」
「無抵抗でやられなきゃいけない理由はないもの
ドルイド族を滅ぼしたって言ったね
同じように滅ぼしてやるって?」
あたりに漂う空気が殺気と強い魔力で満たされていく
「アタシ達は中立を保ちたい
だからここで戦うのが良くないことはわかってる
でもね……仲間を……ドルイド族を傷つけた罪は少しくらい償ってもらわないとね」
傷が消えていく
羽根が、瞳が、漆黒へ変化していく
「まったく……たかが妖精族一人に何たる失態だ」
「天使長……様…申し訳ありません……」
「救護班を呼べ
戦える者はこれより更に奥に逃げた残りの妖精族を……」
「ゲホッ……行かせ……ない」
「ほう……羽根をもがれ、核を潰されなお息があるのか
流石邪悪な種族だ
しかし、わかるぞ
もうすぐお前の魔力が消え入る瞬間が」
「それは……どうかな?
メラン………ログネ…ルワーノ」
「何だ?この黒い蝶は?」
蝶が肩に止まる
その瞬間、体が一瞬にして黒くなり、崩れさった
「これはッ?!」
「『ブラック・フェアリー(黒死蝶)』
さぁ……蝶達よ……もっと…激しく舞え」
蝶の舞う勢いはまるで死を纏った暴風のようだった
「グゥッ!!この…死にぞこないが!!」
かろうじて光の盾を展開し蝶の襲撃を防ぐ
視界が黒一色に染まる中、気配を頼りに首を狙って剣を振る
しかし、それは虚しく空を切った
「何?!一体どこに避ける余力が……」
蝶が消える
目の前には力尽きたエルニの姿があった
あたりを見渡すと殆どの者が死んでいた
「一度……援軍を頼むか……」
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