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「ここなら大丈夫かな」
「で、ティノゼ君はどこから聞いてたの?」
「最初から全部聞こえてました
あの、たまたま通りかかっただけで
わざと立ち聞きしようとか、そう思っていたわけじゃありませんから
気を悪くしないでくださいね」
「大丈夫だよ」
「それで…本題なんですが……
あの!三人で…私とムエクさんとエルニ様で、逃げましょう」
「は?」
「もう、エルニ様やムエクさんが利用されるのを見たくないんです
誰にも見つからない場所で、三人で…」
「ねぇ、それ本気で言ってるの?」
「冗談なわけないじゃないですか!
何でそんなこと言うんですか?」
「ごめんね、あんまりにも短絡的だったから」
「短絡的って……」
「ねぇ、ティノゼ君
何でアタシがドルイド族の言いなりになってると思う?
たったになってしまった仲間を…ムエクを守りたいの
それなのに、逃げる?
自ら危険を犯しに行く?
ねぇ、ティノゼ君は次期ドルイド族の族長何でしょ?
族長は命を懸けて仲間を守ること
それくらいわかるよね?」
「ですが…!!」
「人間に取り入らなければ生き残れない
アタシは選択を誤っていた、だからこうなった
全部トレミルの言う通りなの
力を過信した愚かな者、それがアタシ
ごめんなさい」
「待ってください、エルニ様
私は…私はあなたのことが…」
「それ以上は言わないで
アタシはその気持ちに応えれない」
「そんな……じゃぁ、もし…
ムエクさんも同じ気持ちを持っているとしたら……」
「それも応えられない
二人の気持ちは知っている
でも……アタシは応えられない
アタシが呪われてなければ……なんでもない」
「どういう意味ですか?」
「まだ…話せる時じゃない」
そう言い残して走り去って行った
「待ってください!エルニ様!!」
伸ばした手が空を掴む
後を追おうとしたが、足が動かなかった
握りしめた手を見つめ、行き場のない感情をただ持て余すことしかできなかった
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