出会い

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「ハァ……また何か入って来たみたい ムエク、ちょっと見に行って来るから任せるよ」 「僕達もついて行きましょうか?」 「アタシ一人でも大丈夫 危なくなったらすぐに知らせるよ」 いつもの掴み所のない笑顔で言って南東の方へ向かっていってしまった 「無茶だけはしないでくださいねーー!!」 (魔力は感じないけど油断は禁物 人間?もしそうなら……ハァ…うまく追い返せるかな) 女神、人間、ドルイド、妖精、魔神 5つの種族より構成されていたこの世界 女神族に忠実な人間達は、女神族と結託し魔神族を封じた 魔力を使うことを理由に、ドルイドは滅ぼされ、かろうじて生き残った妖精族は深い森の奥に追いやられた 妖精族は一応中立という立場を取りつつ、人間と女神を憎んでいた しかし、中立である以上人間も女神族も魔神族も傷つけてはいけない 傷つければそれを理由として戦争が起きてしまう 王とその側近のほんの僅かな数の者しか戦闘能力のない妖精族にとって、それだけは避けなければならなかった しかし、強欲な人間は美しい妖精族の羽を狙い何度も森に入ってくる 「人間……か、でも一人?」 男がたった一人 今までとは違う異様な状況に困惑しつつも、目の前に降り立って今まで何度言ったかわからない型通りの警告を告げる 「帰って ここは君がいていい場所じゃない」 返事は来ない 「ねぇ、聞いてる? 帰って、早くしないと女神族の奴らが勘違いするかもしれない だから早く……」 「た…すけて」 こちらの声を無視し、蚊の鳴くような小さな声でそういった瞬間、膝から崩れ落ちる 「なッ?!ちょ‥どうしたの…って、これは……」 ひどい火傷が全身を覆っていた しかし、ただの炎に焼かれたものではない 女神族の魔力が僅かに感じられる 女神族が罪人を焼くときに使う聖火で焼かれたようだ 本来は一気に罪人を焼き殺す為に用いられるものだが…… 「このまま森の外に出したら難癖をつけてくるよね、絶対 しかたない」 『ムエク、ムエク聞こえる?』 妖精族の間で使える念話でムエクを呼び出す 『エルニ様、どうかしましたか?』 『人間が一人迷い込んだみたい アタシ一人じゃ運べないから手伝って』 『わかりました すぐにそちらに行きます』 『なるべく早くお願い 早く手当しないと死にそうなの もしかしたら女神族が見てるかもしれないし、それで騒ぎになったら面倒だから』 大急ぎで大樹の真ん中にあるエルニの部屋まで連れてくる 「状況説明はよろしく 手当はアタシがするから」 「ですが……エルニ様」 「どうかした?」 「わざわざエルニ様のお部屋に連れてくることはなかったんじゃありませんか?」 「森から返したときに文句を言われればそれが火種になる それに、アタシの部屋なら万が一何か起こってもすぐに対処できるから」 「そう…ですか 気をつけくださいね エルニ様は少し無茶をしやすい方です どうか一人で抱え込まないでくださいね」 「心配してくれてありがとう アタシに何かあったら次の妖精王はムエクに任せるね」 「そんな…!僕には無理ですよ」 「アハハ、冗談通じないんだから」 「もう!本当に冗談じゃ済まないんですよ? 全く……」 渋々といった様子で部屋を出ていく その背を見送って男に向き直る 「さて、さっさと済ませないと」
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