始動

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始動

「いよいよ明日ですね、エルニ様」 明日、ついに結婚式が挙げられる 式場はドルイドの街で行われる トレミルが是非にと押し切っていたと噂で聞いた 「そうだね」 「エルニ様……やっぱりティノゼさんの提案を…」 「何度も言わせないで」 「すみません……ですが…僕はやっぱり反対です 僕のことなど気にしなくても……」 「ムエク」 「……………すみません」 有無を言わさないその圧力に負けてしまう 本当は無理やり引っ張ってでも逃げ出すべきなのはわかっている だけど…どうしてもできなかった 「エルニ様、トレミル様がお呼びです 明日のリハーサルをしたいそうです」 「わかった、すぐ行く」 「エルニ様………頑張ってきてください」 「えぇ………ごめんなさい」 ====== 会場となる協会に入った途端、違和感を感じた (何…?この嫌な感じは…?) 「どうなされましたか、"妖精王エルニ様"」 目の前に現れる白い羽根を持た者と、見覚えのある顔 「なッ、お前は女神族?! それにトレミル、一体どういうこと?」 「どうもこうもありません ドルイドの族長殿は賢い選択をなされた ただそれだけです」 「そう……それは残念…ッ?!」 突然、バランスが崩れその場に尻餅をつく 「この期に及んで逃げ出そうとするのは、懸命ではありませんね そんないけない足は切り離してしまった方が良いでしょうね」 状況を理解するのに数秒かかった 左足が膝から上を残して消えていた 「その距離で……いつの間にッ!!」 遅れやってくる激痛に耐えながら必死に逃げ出す術を考える 「おやおや、そんなこともわからないなんて 衰えられたようですね、妖精王様 しかし、あなたはまだ逃げ出そうと考えていらっしゃりますね お仲間のこんな姿を見てもまだ考えれますか?」 「は……?嘘……そんな」 トレミルが引きずり出して来たのは、深手を負ったムエクとティノゼだった その傷口は白く光っていた 「お二人には聖痕"スティグマ"をつけさせてもらいました これはあなたのできる治療法では治療不可能 私が魔力を解かない限り、お二人には徐々に迫る死の苦しみを味ってもらうことになります 私の目的はあなたを最高神様の前に差し出すこと ただしなるべく迅速に内密にという条件付きなのです ですから、これ以上時間を取られても困ります さて、懸命な妖精王様ならどうするべきかおわかりですよね?」 「なぜ……なんでドルイドのティノゼ君まで……?」 「トレミルさん、説明してあげてくだだい 理解力の衰えたこの方もわかるように」 「わかりました 我が不敬の息子はあろうことかお前達妖精族の肩を持った その上に女神族様まで侮辱した こうなって当然だ」 「貴様ッ……ッ!!?」 トレミルに向けた腕が肩から下が消えた トレミルの喉元を狙った植物の根は、目標まであと僅かというところで枯れてしまった 「グゥッアァ…!!!」 「フム、うめき声程度か やはり、七千年も生き続けた妖精王となると苦痛への耐性は高いようですね おっと、無駄話はやめにしましょうか 我々の要求のんでいただけますよね?」 「………わかった………」 「わかっていただけて幸いで……ガッハッッ?!?! え?……な…お前は?!」
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