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それから、毎日植物達の間引きや、羽根で飛ぶ練習、魔力の扱い方など、妖精王としての振る舞いを練習した
「うーん、やっぱり出ないよ
元々創世神様はその、黒き力?っていうのをアタシに持たせてくれてないんじゃないの?
他の言われたことは全部できるようになったのに、これだけどうしてもできないって、やっぱりおかしいよ」
何度試しても戦えそうな魔力を宿した植物が現れることがなかった
傷や病を癒せる植物はいくらでも出せるのにだ
『そのはずはありません
もしそれが無ければ、外敵から身を守る術どころか、新たな妖精族を誕生させることすらできませんから』
「えー、じゃぁ何が足りないんだろう
…………何か…来た」
『南西の方向に強力な魔力を感知しました』
「見に行ってくる」
『お気をつけて』
===
「うーんと……この辺り…だよね
あ、いた……?あの子が?」
そこにいたのは、とても幼い少年だった
案内人に見せてもらった、他の種族の年齢で表現すると5〜7歳程だろうか
確か、まだまだ親元を離れない年齢だと教えてもらった
それが今、たった一人で森の中でいた
キョロキョロと周りを伺っている辺り、明確な目的があるわけではなく、迷い込んだようだ
しかし、強力な魔力は確かにその少年から発せられていた
「ねぇ、僕
こんなところで何してるの?」
「………誰?
その羽根…女神族のじゃないけど
見たことない羽根……」
「アタシはエルニ
まだ他の妖精族はいないけど、
一応妖精族の王様、って言うことになってるんだ」
「妖精族?
なにそれ、聞いたことない」
「アタシも最近ここに来たばかりだからよくわかんないんだけど、
まだ生まれて間もない種族だから他の種族は知らないらしいの
うーん…信用できないかな?」
「………僕は…ゼノディア」
「それは、一応信用してくれてる感じかな?
ゼノディア君は何の種族なの?」
「………………」
「あ、言いたくないならいいよ?
それよりも、どうしてここに来たの?」
「女神族に追いかけられてて…
夢中で逃げてて…、気づいたらここにいたの」
「女神族に?どうして?」
「それは……」
「あぁ、やっと見つけた
全く手こずらせてくれますね
おや?あなたは誰ですか?」
突然、空から白い羽根をもった者が降り立ってくる
友好的な雰囲気ではない
「女神族……?」
「いかにも、私は女神族
ところで、あなたは何の種族なのでしょうか?
その羽根、女神族のものでも魔神族のものでもない
あぁ、最近噂になっていた妖精族とかいう方でしょうか?
本当にいたのですね
あくまで噂かと思っていましたが
妖精さん、おとなしくその子供をこちらに引き渡してくださいますか?」
「この子をどうするつもり?」
「おや?妖精さんは世間知らずなのでしょうか?
その子供は魔神族、それもその魔力は将来上位種になりうる魔力
そんな危険な子供を最高神様がみすみす放っておくわけがないでしょう?
摘める芽は早くから摘んでおくべきなのです
わかりますか?」
「この子を殺すってこと?
どうして?
創世神様はそんなこと望んでないはずだよ、どの種族も平等であるべきだって」
「もういない神の事を持ち出したところで、どうなるというのですか?
さぁ、無駄話はやめましょう
早くその子供をこちらへ」
殺気が伝わってくる
渡さなかったら本気でこちらを殺す気だ
(断れば死ぬ
でも、こんな子供をあんな奴に渡すのも嫌
考えろアタシ、どうしたらこの場を切り抜けられる?)
「エルニさん…優しくしてくれてありがとう
魔神族だってわかっても優しくしてくれた人はエルニさんだけだよ」
「ちょ、ゼノディア君?!」
自ら女神族の方へ足を進めるゼノディア
「おやおや、素直ですね
やっと観念してくれたのですね」
「エルニさんまで傷つけないでね」
「えぇ、もちろん約束させていただきましょう」
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