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10.3人の被害者
10.3人の被害者
数日後、加納、山下刑事が富浜署の捜査本部に戻ってきた。
二人は有馬管理官のデスクの前に進んだ。午後10時だった。
「加納刑事、山下刑事遅くまでご苦労だったな」
有馬管理官が労った。
「管理官。三人の被害者の共通点が分かりました。三人の被害者は富浜区の出身だったのです」
「え? 現住所が違うだろ」
「はい、しかし、本籍は皆、富浜区東新国一丁目だったのです」
「富浜区東新国一丁目? 再開発されるまで荒地だったところだな」
有馬管理官は首を傾げた。
「そうです。しかし、関東大震災前は、小運送店の集まるターミナルだったようです」
「今度の事件は被害者の肉親と関係があるかもしれないのか?」
「三人の被害者の両親に確認すると、子供の頃には、既に現在の住所に住んでいたそうです。ですから三人の祖父たちに関係がありそうです。三人の祖父は皆運送の仕事をしていたそうです。何かありそうですね」
加納、山下刑事が言った。
有馬管理官は報告を聞いてため息をついた。
加納、山下刑事の報告を横で聞いていた美子もため息をついた。
家族への怨恨説は美子が発言したものだったが、恨みを晴らすために無関係な家族を殺害できるのか? 人は何十年も恨み続けることができるのかと思った。
三人の祖父たちに何があったのか?
美子は首を傾げた。
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