11.心霊写真

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11.心霊写真  美子は週刊誌の記事で『マンホール事件と悪霊』を読んだ。心霊研究家法眼がテレビの情報番組で連続殺人事件を予見し、マンホールで爆発事件が起きたため、雑誌で対談をしたものだった。雑誌には、法眼と警察OBの口論の様子も写真つきで載っていた。  今までも、事件を解決するために様々な専門化の意見を聞いてきた。だが、その中に心霊研究家は入っていない。それでも心霊研究家に意見を聞きたいと思ったのは、今まで扱ってきた事件と違うと肌で感じていたからだ。  法眼は青山の高級マンションに住んでいた。マンションは地下鉄二路線が乗り入れする駅から徒歩五分の位置で、交差点近くの賑やかな雰囲気と違って閑静な所だった。駐車場には高級外車が並んでいる。  美子は警察手帳を管理人に見せると、法眼に面会予約した事を伝えた。管理人は法眼に内線で連絡すると、高さ三メートルのガラス戸の開閉ボタンを押した。美子はエレベータで九階へ行くと、九○五号室のチャイムを鳴らした。  法眼がドアを開けると、美子は警察手帳を見せた。 法眼はポロシャツにジーンズをはいていた。 美子は法眼に案内されて居間に通された。 「天井が高いですね」  美子は思わず声を漏らした。 「天井の高さは二百五十センチあります。天井の丸い穴は空気清浄機の穴です」 「とても静かですね」 「窓は二重サッシになのです。窓からは東京タワーが見えますよ。私は夜景を見ながらビールを飲むのが好きなんです」  リビングの広さはおよそ三十平方メートル。書棚、テレビ台は壁面に収納されて、チャイナ陶器が並んでいる。五十インチテレビの前にゆったりした革張りのソファーがある。贅をつくしたインテリアに、美子は改めて心霊研究家は儲かる仕事だと溜息をついた。 「こちらにお座りください」  法眼は美子を座らせると、入れたてのコーヒーを持ってきた。 「香りが素敵ですね」 美子はコーヒーカップを鼻に近づけて言った。 「コーヒーメーカーはドイツ製です。豆にはこだわりがあるんですよ。少し渋くないですか。よかったらミルク、シュガーもどうぞ」 「私ブラックが好きなんです。テイストは、ちょうどいいです」 「それはよかった。私は甘党なんですよ。シュガーがないと頭が働かない」  そう言って、法眼はコーヒーカップにシュガーを入れて一口飲んだ。 「女性の刑事だということでしたが、印象が違っていました」  法眼が言った。 「女子柔道の選手を連想されたんですか? 確かに刑事ドラマでは剣道や柔道している場面がよく出てきますから」 「まあ、そうですね」 「先生も、テレビや雑誌のイメージとはずいぶん違いますね。いつも有名なマジシャンのような服を着ているのかと思いました。銀髪のオールバックでしたよね?」 「小豆色の学ランみたいな服の事ですか? あれは営業用です。銀髪はかつらなんですよ」 「霊能者のイメージが小豆色の学ラン風の服と銀髪なんですね?」 「まあ、そうです。背広でもいいですけど、それでは、マスコミ受けが悪いのです」  美子は頷くと、棚の陶器を指さして高価なものでしょうねと言った。 「それですか。二百万位だったかな。隣にある陶器は五百万だった」  法眼もカップをテーブルに置いて、部屋の調度品の話を続けようとした。  だが、美子に部屋の自慢話を聞いている暇はなかった。  十分法眼にリップサービスをした。  そろそろ本題に入ろうと思った。
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