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12.誰れでも悪霊になる
12.誰れでも悪霊になる
「先生は放送の中で誰でも悪霊になるとおっしゃっていますが?」
「そうです。人間は誰でも悪霊になる可能性がある。
人間は考えると脳内に微弱電流が流れます。脳波はそれを計測したものです。電流が流れると電磁波が発生します。
私は恨みの念を持って死ぬと、電磁波が増幅され放射されるのではないかと考えています。その電磁波が何かの媒体に転写される。それが悪霊の正体ではないかと」
「なるほど」
美子は納得できなかったが頷いた。
「転写する物体は何ですか?」
「それは、その時の状況によります」
「どうして、怨念を持った時だけ転写が起きるのですか?」
「それは難しい質問だな。恨んで死んだ人が全て怨霊になるとは限らないから」
「わからないという事ですか?」
「そうですね」
美子は法眼の話は仮説にすぎないと思った。
「先生は事件のニュース映像で、女性の霊を見たとおっしゃっていましたが?」
美子の声は詰問するような口調になった。
「あれはほとんど嘘です」
「嘘?」
「そうです。ディレクターから刺激的に話してほしいという注文があったのです」
「でも情報番組ですよね? お笑い番組じゃない」
「芸能コーナーもある。NHKのニュース番組とは違います。台本があるのです」
「警察OBの方と口論しましたよね?」
「事前に打ち合わせしていました」
「え!」
美子はその言葉に驚いて、法眼が心霊現象を商売にするタレントに見えてきた。
美子は今まで理詰めで問題を解決してきた。人は嘘をつくから、言葉は信用できない。しかし、言葉を話す仕草や、言い回し、態度にはその言葉の真偽が現れると考えていた。
美子は悪霊という仮説の話ではなく、法眼自身の事を聞き、その話し方、仕草から信用できる人間か判断しようと考えた。
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