12.誰れでも悪霊になる

1/1

57人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ

12.誰れでも悪霊になる

12.誰れでも悪霊になる 「先生は放送の中で誰でも悪霊になるとおっしゃっていますが?」 「そうです。人間は誰でも悪霊になる可能性がある。  人間は考えると脳内に微弱電流が流れます。脳波はそれを計測したものです。電流が流れると電磁波が発生します。  私は恨みの念を持って死ぬと、電磁波が増幅され放射されるのではないかと考えています。その電磁波が何かの媒体に転写される。それが悪霊の正体ではないかと」 「なるほど」   美子は納得できなかったが頷いた。 「転写する物体は何ですか?」 「それは、その時の状況によります」 「どうして、怨念を持った時だけ転写が起きるのですか?」 「それは難しい質問だな。恨んで死んだ人が全て怨霊になるとは限らないから」 「わからないという事ですか?」 「そうですね」  美子は法眼の話は仮説にすぎないと思った。 「先生は事件のニュース映像で、女性の霊を見たとおっしゃっていましたが?」  美子の声は詰問するような口調になった。 「あれはほとんど嘘です」 「嘘?」 「そうです。ディレクターから刺激的に話してほしいという注文があったのです」 「でも情報番組ですよね? お笑い番組じゃない」 「芸能コーナーもある。NHKのニュース番組とは違います。台本があるのです」 「警察OBの方と口論しましたよね?」 「事前に打ち合わせしていました」 「え!」  美子はその言葉に驚いて、法眼が心霊現象を商売にするタレントに見えてきた。   美子は今まで理詰めで問題を解決してきた。人は嘘をつくから、言葉は信用できない。しかし、言葉を話す仕草や、言い回し、態度にはその言葉の真偽が現れると考えていた。  美子は悪霊という仮説の話ではなく、法眼自身の事を聞き、その話し方、仕草から信用できる人間か判断しようと考えた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加