14.悪霊の正体

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14.悪霊の正体

14.悪霊の正体  法眼は何度もマンホールに写った女の正体を探ろうとポラロイド写真を見ながら霊視をした。しかし、女の素性は判らなかった。まるで悪霊が見えない壁を張り、法眼の霊視を拒否しているようだった。  法眼は書斎で、写真に写っていた縞模様の着物をヒントにインターネットで検索することにした。  しかし、検索ワードを「明治」、「大正」、「女性」、「着物」、「縞柄」に変えて検索しても該当する記事はなかった。  着物の縞柄は明治、大正期の一般的な紋様だったからだ。  法眼はキーボードから指を離すと右手で目上を強く抑えた。目の芯に痛みが走る。洗面所に行き顔を洗うと窓から外を見た。すっかり日が暮れている。法眼が腕時計を見ると午後七時だった。すでに十時間調べていたことになる。  法眼は書斎に戻り、椅子に座ると目を瞑り、何か見逃していないか考えた。その時、一枚の写真の顔に薄く白い帯状の物が写っていたことに気づいた。  法眼は両手を組んで首を絞めるように当ててから、その両手をゆっくりと顔の上に移動した。両手が両目のところに移動したところで、そのままの姿勢で暫く考えた。  白い帯のように見えた物は、目隠しの布のようにも見える? だとしたら、なぜ、目隠しをしたのか? 自分で目隠しするわけがない。 誰かが目隠しをしたのか? でもなぜ、他人が目隠しをするのだ、何故だ? ……その問いが法眼の頭の中で一杯になり、頭を締め付けた。  法眼は立ち上がって台所に行くと、冷蔵庫から缶ビールを取り出して、窓を開け夜風に顔を当てた。  法眼の瞳に東京タワーが映った。  法眼は夜景を見ながら缶ビールを一気に飲んだ。渇いた喉に強烈な刺激が注がれ、睡魔が心と体を包んだ。一日中パソコンを操作し、心身とも悲鳴を上げていた。法眼は寝室に向かうと、そのまま倒れるようにベッドに沈みこんだ。  深夜だった。法眼は夢の中で叫び、その声で目が覚めた。何人もの男が女に目隠しをしている夢だった。目隠しは女のためにしたのだ。何故そんな事をするのか?  ……女死刑囚だったからではないか? 絞首刑の目隠しか!   法眼はベッドから起き上がった。  書斎に行くと椅子に座り、パソコンのキーボードを叩いてインターネットの検索をした。明治、大正、昭和の猟奇事件を起こした女死刑囚の記事を探した。  数行の記事がヒットした。  それは大正時代に猟奇事件を起こした今井イネ死刑囚の記事だったが、詳細は分からなかった。  さらに詳しく調べるにはどうすればいいのか?   法眼はキーボードから手を離して腕を組んだ。  新聞をまとめた冊子を調べてみるか?   女死刑囚の記事はほとんどないはずだから、もし、女が死刑囚だったのなら、新聞の一面に載るはずだ。  国会図書館なら一年分の新聞をまとめた冊子がある。  夜が明けると、法眼は国会図書館に行った。   大正の新聞冊子は1年分が1冊なので、新聞社一社だけで十五冊。代表的な新聞社を調べるだけで、六十冊以上になる。  法眼はその冊子を調べた。A三に縮小された紙面の文字は読みづらいが、幸い、新聞見出しは大きな字でセンセーショナルに書かれている。ページをめくるだけで、見出しが目を刺すように飛び込んでくる。法眼は猛烈な勢いでページをめくった。  毎朝新聞の冊子を調べていた時だった。  似ている! ついに見つけたぞ! 法眼は心の中で叫んだ。目を大きく見開いた。  その写真は法眼が霊視した縞柄の着物を着た女の写真だった。法眼はその記事を読み始めた。読みながら唸って顔を歪めた。法眼は女の載っている記事をコピーすると、その場で美子に電話した。
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