8.失踪者

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8.失踪者

8.失踪者 「失踪者の捜査はどうだった?」  有馬管理官が報告を求めた。  中山刑事が立ち上がった。 「水道局関係で退職者はいませんでした。しかし、富浜区のビル工事の作業員が一ケ月前に失踪しています。名前は山田一郎。二十四歳です。掘削工事のオペレータです」 「失踪した理由は?」  有馬管理官が言った。 「わかりません」 「失踪届けは?」 「出ていません」 「どの位勤めていたのか?」 「一年だそうです」 「会社から情報は取ったのか?」 「はい、上司、同僚の話では、無口で人と争いを起こすようなタイプではないそうです。身長百六十センチと小柄な男です。失踪前少し落ち込んでいたという話がありました。自殺するんじゃないかという者もいました」 「自殺しそうなのに誰も助けようとしなかったのか。冷たい現場だな。顔写真は入手できたのか?」 「はい、勤めていた会社から履歴書の写真を入手しています」 「じゃ、山田の写真を三人の被害者の会社の同僚や友人に見せて確認してくれ」  中山刑事は頷いて座った。 「山田一郎は百六十センチの小柄な男で、爆薬の知識はないと思われます。管理官。第二被害者の山村卓也は百八十センチ、体重七十キロです。とても山田の犯行とは考えられませんね? 山田一郎は被疑者から外していいのではないでしょうか?」   須藤課長は山村卓也のファイルを見ながら有馬管理官に言った。 「意見は?」  有馬管理官が言った。  刑事たちは頷いた。 「そうだな。しかし山村卓也の捜査は始まったばかりだ。山田一郎については引き続き捜査を続けてくれ」
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