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第一章 菊のかんざし
おれが出会った少年は狼の面を着け、古寺に住む嫌われ者だった。
* * *
村には聞きなれない音が響いた。
ぽっくり ぽっくり
その音の主は華やかな身なりをした女だった。
町にいると言われる芸子のように長い髪を結いあげ、菊のかんざしが陽に当たり輝いていた。淡い紫の裾引きにだらりの帯が歩くたびになびく。村の人々は見慣れぬ女に目を奪われ、過ぎ去った道には甘い香りを残した。
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