第一章 菊のかんざし

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 女は橋を渡ろうとした時にふと横を向いた。咲き散った桜の木の下に少女がいた。少女が何かを一心に見つめていた。女は足を止め、少女の目線を辿った。女はわかると目を細めた。通りを歩いていて漂っていた生暖かく、甘い香り―饅頭だった。女は少女へ視線を戻した。色褪せた赤着物は背丈に合っていないようで、草履も何とか形を成している。髪も一つに束ねているが、明らかに手入れをしていないのがわかる。腹を空かせているのか両手を腹に当てていた。女はゆっくりと歩き出した。  ぽっくり ぽっくり
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