第1話『 己 』

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 どこに向かっていたかは忘れたが家族3人で車に乗っていた時に、信号無視したトラックが横から突っ込んできた。奇跡的に一命を取り留めたのは後部座席に居た自分、…独りだった。 「相変わらず悲観的ねぇ~。でも結構自分の事、分析してるわよね。浩二君を見習ってほしいわ。うちの人なんて好きでやってるのかも分からないし、夢や目標なんてあるのかしらって感じ?まぁ歳も歳だし仕方ないのかなー」 「本当に閉めちゃうんですか?」 「……そうねぇ、あの人がそう言いってるからね。私の力だけじゃあの人も、この店も変えるのは無理そうね。」 「吉矢さんの料理、凄く美味しいと思うんですけど」 「味だけじゃ限界があるのよ、きっと。この流れを変えるのは何かもっと大きなエネルギーが必要なのよねぇ…」 「エネルギー…?」 「浩二君は大事な本職の方頑張らないとね!応援してるんだよー!」 「……ありがとうございます」 「暗い暗い!そんなんじゃ次のオーディションも受からないわよ!」と言って俺の尻をパシッと叩いてくる朱美さんのノリは嫌いじゃない。
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