第1話『 己 』

12/36
前へ
/102ページ
次へ
9月2日 22時15分  いつものように店が終わり、電車で帰る。 パトカーのランプが交差点を照らし、ボンネットが歪んだ車が一瞬目に入った。  俺は疲れていたり、ふと気が緩んだ時にこういう光景を目にすると  フラッシュバックを起こす時がある。  -「後ろに子供が居るぞ!」   確かそう聞こえた。暗闇がゆっくりと赤く眩しい世界に変わっていく。天と地が逆になっている。辺りはガラスの破片が散らばっていて、ほんの数センチ先ではぐったりとした大人の手が見えた。その手を触ろうとしたが自分の身体は動かなかった。なんとか首を動かして見ると座席とドアに挟まれている自分の身体が見えた。その瞬間、また視界が暗闇へと変わっていった。-
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加