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9月3日 9時40分
特に変わりのない朝。電車からはいつもの風景。『活』はその日も目に留まった。
【『活』の前、17時に村上さんに会う】
「村上……」
同日 11時15分
オーディション会場では同じような人間が集まる。年齢、身長、髪型、服装。客観的に見たら異様な光景だろう。
オーディションでは想像を超えるシチュエーションや演技を要求をされる事がある。
「えーそれで、その笑いが止まらない薬で笑い死ぬ所お願い致します」
「はい」
「ではいきまーす、はいっ」
「んっ。へへ、へへへッハハハッ、あれ、 止まらないハッ、ハハハハハッハハハッハッハハハハハハハハハハハハハ、ハハ……ハ……」
「はい、ありがとうございますー」
「……ありがとうございました」
良い手応えを感じても落ちる事の方が遥かに多いのであまりそういう事は考えないようにしている。しかし今回は久々に悔いが残った。
その後、特に予定もなく適当に時間を過ごし自宅へ向かう。
いつもの窓からの景色。俺は自然と『活』という字を探していた。そしてその建物の前を通った時、年配の男性が『活』の垂れ幕を畳んでいるのが見えた。
「ん?」
時計を見ると17時1分。
「17時まで…?」
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