第1話『 己 』

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1 9月1日 8時30分  駅周辺の道は再び学生達で賑わっている。  人々の往来が激しい中、クラクションを鳴らし徐行する車に満員のバス、向かってくる学生達を器用に(かわ)しながら進んでいくサラリーマンを見ながら、 ‥‥あぁまた新しい季節がやってくるのかと思う。  といっても自分は特に変わりのない生活を送っている。高校を卒業して何年経っただろうか。いい歳をして未だにアルバイト生活をしている。  ……役者をしながら。  役者と言える程でもないが、役者なんて所詮自称の世界だ。テストも無ければ免許も無い。自分が役者だと言えば役者なのだ。  俺は、役者……なのだろうか。
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