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『活』
その文字はとある小さなビルの屋上から掛けられた、2メートル四方程の垂れ幕に書かれていた。
そこまで大きくはないが、ただ一文字
『活』
と書かれた垂れ幕は簡単に目に留まった。
「何だあれ」
ボソッと声が出た。
しかしそんな事も電車を降りる頃には忘れ、いつも通り「かわばた亭」に向かった。
大型スーパーによって廃れていった商店街の中にしぶとく残っている定食屋だ。
口数が少なく黙々と仕事をこなす亭主の矢吉さんに、ハキハキと喋り、いつも明るいという真逆の性格をした妻の朱美さんが何年も売れない役者の俺を唯一アルバイトで雇ってくれている。
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