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駅を出て直ぐだった。
多くの人が交差していく中、小走りで追い越していった女性らしき人物がハンカチを目の前で落とした。
俺はハンカチを拾い直ぐにその人へ渡そうと思ったが、頭を上げた時には既にその人は見当たらなかった。
「あれ」
服装、髪型、一瞬しか見ていないがそれらしき人は見つからなかった。
人混みに隠れてしまったのか、もしくはこの一瞬で走り去って行ったのだろうか…。
俺はハンカチを直ぐ近くあった大きな木の枝にわかりやすく掛けた。その時、紙くずがヒラヒラと落ちたが気に掛けず、かわばた亭に向かった。
色あせたボロボロの暖簾をくぐり、店に入る。
客足が少ない店なので食材は基本その日の朝買う事になっている。昨夜書かれたメモ紙を手に取り、近くの業務用スーパーへ行く。
本当はアルバイトなんて雇わなくても夫婦で店を回せるはずだが、俺を同情してか良くしてもらっているので出来る事は全部任せてもらっている。
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