第1話『 己 』

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          3 同日 21時46分  この日、いつもに増して喋らなかった吉矢さんは、閉店間際に店を閉じる事を打ち明けてきた。 「えっ?今年いっぱいですか!?」  俺は今日一番、いやここ数週間で一番大きな声が出た。 「ああ、もう廃れていくだけだよ、この商店街は。ごめんな浩二、大変なのに」  中華鍋を洗いながら背中越しに俺と会話をする吉矢さんの姿からは詫びる気持ちが痛いほど伝わって来た。 「ここ閉めた後は、どうするんですか?」 「んー、まだ特に考えてはいないな……」 「朱美さんと2人で決めたんですか?」 「……いや、俺がそう決めた」  厨房の隙間から見える朱美さんはテーブルを拭いている。 「申し訳ないがー、そのつもりでいてくれ」  正直ここ数年、いつこの言葉を掛けられるかと思っていたが、いざその時が来るとなかなかの衝撃だ。何故だか急に換気扇の音がとても大きく感じた。
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