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宵の渚
渚はいろんな音がする。夜が間近に迫った9月の砂浜を、コヂカは制服のスカートを揺らしながら歩いていた。
暗闇に目を凝らしてスニーカーの先を見つめる。
「コヂカあぁ、あんまり遠くに行かないでよ!」
クラスメイトのカンナの声が波間に響いた。
コヂカは振り向いて、遥か先で友人たちと砂浜にしゃがむカンナに頷いた。
カンナとその取り巻きたちは、波打ち際でおしゃべりをしながら、打ち上げられた漂着物を拾い集めている。
宵の静かな漣(さざなみ)は、彼女らのおしゃべりによってかき消された。コヂカは一刻も早くここから抜け出したい一心だった。
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