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「自分でも分からん。
ただ、その翌日は大騒ぎになってな。
不思議なことに、
皆の舌は残っていて、
笑顔で息絶えていたのだ。
それでも、
わしの訴えで、
あの楠は残された」
照太郎は懐かしそうに
少し大きくなった楠を見た。
「そんなら、
本当のことかも知れませんね」
はじけるような若い娘は、
ふと照太郎に顔を寄せ
口づけた。
「わたしを捨てただけでなく、
他の女に喋りましたね。
これでもう、おしゃべりはできませぬ。
さぁ、一緒に長く参りましょう」
後には、
舌のない照太郎が
笑顔のような表情で倒れていたということだ。
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