喪失

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 人は何がきっかけで、まっとうな道から外れるのだろうか。  ついに今日、悪行がバレてしまった。  まっとうな人間ではないという烙印を押された。  心の隙間を埋めるはずの代替え行為が、もっと空虚感に苛まれることになってしまった。  「右のポケット見せて」  「ダメ」  「じゃ、中身確認するよ」  「ダメ」  「それじゃぁ、肯定することになるよ」  「いいよ」  「・・・・・・」  「返してきなさい」  「はい」  ポケットの中のモノを、握りしめた。  これだけは見せるわけにいかない。
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