Ⅱ バケモノ退治には確かな備えを

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「な、なんじゃこりゃあ!?」  そこにある扉を開け、地下室へ一歩足を踏み入れた瞬間、俺は思わず驚きの声をあげた。  その部屋には所狭しとガラスでできた様々な形の容器が並び、強烈な薬の臭いがツンと鼻を突く。それに中央に置かれた妙にデカいベッドには、何やら錆びた鉄製の拘束具が破壊された状態で残っている……。  あのヴィクターって野郎、いったいここで何をしてやがった……いや、んなことよりも、留守宅のはずなのに天井のランプが灯ってるじゃねえか! 「……ハカセ? 博士ナノカ?」  俺が嫌な予感を覚えたその時。不意に背後でそんなたどたどしい男の声が聞こえた。 「……っ!?」  振り返った俺は、そこにいたバケモノにますます大きく目ん玉をひん剥いた。  身長は8フィート(約2.4m)ぐれえの大男で、寸足らずな茶のローブを着てはいるが、露出している顔や腕を見ると無数の縫った痕があり、なんというか、ツギハギだらけ(・・・・・・・)といった印象を受ける。それに死体のように濁った眼はぼんやりと光り、首の左右には太いボルトが突き刺さってるじゃねえか! 「博士? イヤ、チガウ。オマエ、ヴィクター博士ジャナイ……」 「ヴィクターのことを知ってる? やっぱりこいつがそのバケモノか! だったら話は早え! シグザンドの魔術によりて汝に命ずる! 邪悪なる魔物よ、とっととここから立ち去りやがれ!」  俺は手にした護符をバケモノへ突きつけると、決め台詞のように呪文を唱える。 「オマエ、博士ノ居場所シッテルノカ! シッテタラ、オデ二教エテクレ!」  だが、バケモノはパシンと護符を手で払うと俺の間近に迫り、やはり舌足らずな言葉使いでそんな質問を投げかけてくる。 「魔法円が効かねえだと!? んな(ナリ)してるくせに魔界のものじゃねえってことか? だったらコイツで……」  眼前に迫る醜いバケモノの顔に、俺は驚きと恐怖を覚えながら今度は腰のフォルダーから銀の弾丸を込めた燧石(フリントロック)式短銃を引き抜いてやつに銃口を向ける。
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