犬神の頭

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「この辺でいいか」 「おう」  外に出ると山奥の闇の中だというのに蒸し暑さはほとんど変わらなかった。風に揺れる葉音もそれほど清涼感を与えてはくれない。RはiPhoneの明かりで周囲を照らしている。 「ビビりすぎ」 「ちげーよ警察がいねーか見てんだよ」 「いたら明かりでこっちがバレるだけじゃん」 「相変らず正論ばっかうるせーな」  チクリと傷つくがRに悪気がないことはわかっている。こういう言葉にいちいち反応するから東京でもうまく周りに溶け込めなかったのだ。 同じサッカー部の補欠同士じゃなかったら、僕とRは友達になっていただろうか。そんなことを考えてしまう自分がたまらなく嫌だった。  足音が妙に大きく聞こえてしまうのは何故だろう。そんなことを考えながらアスファルトの地面を下りSの元へと向かった。 女の叫び声が聞こえたのはその時だった。僕らは肩をびくりと跳ね上げ、顔を見合わせると走り出した。 闇の中に浮かぶホテルの前まで来るとそちらから誰かが駆けてきたのがわかった。
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