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Get back together_1
ここは天国に違いない。目を覚ました世界は体全体がぬくもりに包まれていた。
痛くも寒くもない、ごくごく当たり前な環境に俺はありがたみを感じている。額は包帯でぐるぐる巻きになってて、体も重さが残っているけど、しんどさやだるさといったものはない。
そう、あたたかいんだ。包み込むようなあたたかさが背中から伝わってくる。目の前でオレンジ色を点すストーブも体を温かくしてくれているけど、そういうのとはちょっと違う、感情が伝播してくるようなぬくもりだ。
外は既に真っ暗で、電灯も点けていない教室はストーブの色だけが頼りだ。その割に室内はよく見えていて、向かい合わせで置いてあった鏡が重たい理由のすべてを教えてくれた。
後ろから被さって俺の全身を抱えてくれた人間がいた。凍りついた俺に触れるのは難を極めただろうに、身震いひとつせずに俺を抱きしめてくれている。
目を覚ましたことに気づいたそいつは俺のうなじに顔を押しつけると、ひんやりとしたものを筋にして流し落としていった。
「どこで頭打ったのよ。どこから狂ったのよ。ほんと、あんた頭おかしいんじゃないの」
「狂ったオーダーだったよな。でも、まあ、女子一生の問題だったからな」
「こんなになってまで……叶えてほしいなんて」
「思ってくれよ、そう聞こえたんだ。三年前のツケ、返したかったからさ」
「言ってないわよ!そんな権利私にあるわけない!あんたの将来……潰したの、私だよ」
やっぱり時計の針は止まったままだった。だからこそ野球部に入らず風紀委員なんてものを三年間務めていたんだろうけど、もう、そいつは背負わなくていい。向きを返して正面で見合った俺は思い切ってエースをぎゅっと抱きしめた。
向こうだってずっとやってたんだから、俺だけが怒られるなんて不条理は起きないはずだ。驚きのあまり震えた腕で今にもぶん殴ってきそうな気がしないでもないけど、多分大丈夫。
まだ力強くはない左手をぐるりと回して、ポニーテールごと俺は彼女の体を寄せる。
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