写真の箱庭

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少女の写真は、男の仕事部屋とでも言うべき場所に、所狭しと貼られていた。 男は、その少女の見せる表情の一つ一つに魅せられていた。芸術品だと思っていた。そこに、他意はない。例えて言うなら、美しい風景を見たから写真を撮る、みたいな。美術品が好きだから、美術館に行く、みたいな。好きが高じて、画集を買う、そんな感じで。 どんな美しい景色よりも、どんなに価値のある芸術品よりも、その少女の見せる表情(かお)が好きだった。 男にとって仕事部屋は、安らぎを得られる場所になっていた。そこだけが、自分の世界で、そこだけに、閉じ籠る。 言うなれば、独り占めの世界。 そこは、箱庭。
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