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その男の家は意外にも大きなマンションの中階層にある一室だった。
男は、撮った写真を自分で現像していた。人の写真を、それも盗撮したものを、人に預けるわけにもいくまい。
男の写真は、だがしかし、少女のものだけではなかった。
そこには、美しい街並みや、朝日に照らされてキラキラと美しく反射する小川、人があまり立ち入らないような、薄暗くも葉の隙間から一筋の光を落とす森。そんな、神秘的で美しい風景もたくさん、たくさん納められていた。
道を歩く猫、公園に生えている小さく花を咲かせた誰にも見向きもされない雑草、そんな小さな日常も。
日々移り変わる時を、二度と戻らない瞬間を、その男は意図も容易く、切り取っていた。
それは、多くの人々の心を魅了した。
写真を撮ることは、その男の生き甲斐だった。
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