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パシャリ、パシャリ……
カメラを構え、写真を撮っている男が一人。何度も、何度もシャッターを切る。
パシャリ、パシャリ……
カメラを下ろした男は、黒いパーカーのフードを被って、白いマスクをしていたが、恐らく二十代であろうことは予想できた。
じっと見つめるその視線の先にいたのは、一人の少女。恐らく、高校生くらいの。芸術品かと見紛うほどの美しさを持った少女。
男は、もう一度カメラを構え、しかしすぐにその腕を下ろした。
少女の方は、友だちと楽しそうに談笑しながら商店街を歩いていく。
男はその後をつけた。
商店街を抜け友だちと別れた少女は、住宅街の方へ向かった。ずっとずっと歩いていって、住宅街を抜けたそこには、小高い丘があって、その下に広がる街を一望できた。
手すりに持たれて、哀愁を含んだ表情で、街を彩る夕陽に顔を染めて溜め息を吐いた。
その瞬間、男はパチリ、とシャッターを切る。
男は毎日、毎日、この少女の写真を撮っていた。笑ったり、怒ったり、泣いたり、楽しんだり……そんなくるくる変わる少女の表情を。
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