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見れば、柱にくくり付けられた防水時計は、22時を指している。
すると程なく......
ブルルルル......
ブルルルル......
タオルの上に乗せておいたエマのスマホが、メールの着信を知らせて来た。
「よっこらしょっと!」
エマはそんなスマホを手に取ると、ピッ、ピッ、ピッ......メール画面を開く。どうやら圭一から送られて来たメールのようだ。そんな受信画面には、
『今、槇田玲子が自供しました。間も無く警察が来ますので、エマさんはゆっくり露天風呂に浸かってて下さい。圭一』
「あら、ごめんなさい......あたしの仲間が警察呼んじゃったみたい。あなたの手柄がパーになっちゃったわね」
「な、何ですって?!」
敏腕刑事、沢山一美は、『持つべきものは仲間』......そんなエマが今示した教訓を、一生心に刻み続けるに違いない......
実際のところ、さっき食堂で玲子と言葉を交わした時点でエマは看破していた。槇田玲子に自供させる事が如何に容易いかと言う事を。
お客様は神様、一生懸命、プライド......それは玲子がいかにも自信有り気に語っていた言葉だ。その時、玲子が酔いしれるかのように、目を輝かせていた事を、今でもエマはしっかりと覚えている。
彼女のそんな信念を否定していけば、必ずや崩れていく......そんな確信の元、旅館のロビーでは、皆が示し合わせたかのようにそれぞれの役目を果たしてくれていたに違いない。
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