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「男同士だぞ?」
「だから?」
「人目があるだろ?」
「関係ある?」
「大体今まで連絡せずにいきなりだろ?」
「僕は宏樹を追ってきたんだ。連絡しなかったことは謝る。でもね、僕には宏樹以外に好きになれる人がいなかったんだよ」
「どうして俺なんだ?思い出に縛られ過ぎじゃないのか?」
「かも知れない。ただ宏樹との写真見てれば、やっぱり宏樹がいいと思うんだ」
全く退かない恵斗に周りには人だかりができる。
「はっきり言うけど俺に抱かれたいと思うのか?抱きたいって思うのか?思い出だけの関係でそこまで出来るのかよ?」
「出来る。宏樹にだったら抱かれたい。宏樹だったら抱きたい。宏樹じゃなきゃやだ」
人だかりから歓声が上がった。
「じゃあキスしてみろ」
俺の一言で恵斗は背伸びをして俺の唇に唇を触れて舌を入れてきた。俺は抵抗もせずに受け入れてしまった。
「小さな頃、よくこうやってキスしてたんだよ?覚えてない?」
一度唇を離し、また唇を押し付ける。俺だって覚えている。成長した恵斗でも嫌悪感は全くない。
「考えさせて。放課後までには答える」
にまっと恵斗は目を細めて笑った。
「宏樹、多分覚えてないだろうけど僕は宏樹より一つ下だよ。だから側にいても気付かなかったんだよ。中学一緒だったのに宏樹は気付いてくれなかった。高校でも気付いてくれなかった。だからチョコを贈ったんだよ」
恵斗の言葉はどうしようもなく甘くて、そのくせ見た目も幼くて、俺の性志向にも気持ちにも逆らうものは何もなかった。
「放課後を待って」
ただ俺は恵斗に相応しい人になったのだろうか。守っていけるのだろうか。心から愛せるのだろうか。同性である壁を乗り越えることが出来るのだろうか。認めてもらいたい家族や仲間に認めてもらえるのだろうか。
待ってると言った恵斗のこれからを一日かけて悩み、馬鹿らしくなった。
「俺も恵斗しか好きになれなかったじゃんよ」
学校中が恵斗に対する俺の答えを待っている。クラスメイトたちは、散々に囃し立てる。もう決まった。
放課後、また俺の下足箱の前に立つ恵斗。うつむき、人だかりも気にせずに待つ恵斗。
「恵斗」
俺に呼ばれて顔をあげて微笑んだ恵斗を俺は抱き締めた。
「一日悩んでも恵斗と付き合わない理由は思い浮かばなかった。将来結婚したい奴も恵斗しかいなかった。約束はちゃんと覚えてる。俺も恵斗との写真ばかり見てた」
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