乱れ華の芽吹き

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乱れ華の芽吹き

「撮るよーー!」 引っ越しする友達と並んで母に撮ってもらった一枚。あの時、俺はボロボロに泣き崩れて高校生になった今、見返して不細工な顔してるなと懐かしくなる。男同士なのに将来結婚しようとか誓ったっけ。小さい頃は本当に怖いもの知らずだ。奴は綺麗な顔してたから、俺の嫁さんになっても悪くないかもな。あの頃のままならばな。 母に撮ってもらったこの一枚。今では俺の宝物だ。今なら、何故そうなのか、俺は中学に上がった頃に自らの性志向に気付いたから。小さな子供を好んでいると自らの体の反応に気付き、罪悪感と共にスマホを弄くって自らは世間一般に言われるロリコンであると気付いた。何かで代用しないと犯罪に手を染めかねないと確信した俺は幼稚園や小学校に通っていた頃の写真を眺めては己の気持ちに歯止めをかけていた。 その中で最も多く眺めていたのが、幼稚園の頃に引っ越していった佐々木恵斗。男であるのに女の子と見紛うばかりの造形の美しさにロリコンの俺は記憶を掘り起こしながら、恵斗が俺に将来結婚しようと囁いていた事実に悦に入っていた。こんな可愛い嫁さんならば男でも構わないとかふざけた想像をしながら。 街を歩いて幼い女の子を目で追っても学校で何人にも告白されても恵斗の可愛さに敵う者はなく、結局高校二年の終わりが近付いても恋人いない歴はイコール年齢だ。 「宏樹はモテるのに残念だよな」 周りの友人たちがそのように俺を評する。 「俺はロリコンだから、絶世の合法ロリにしか興味ないから」 ロリコンであることを隠す気もない。わざわざ隠す奴ほど犯罪に走るんだ。口にして冗談にして自分を笑い者にしていれば心は落ち着く。ただ恵斗の写真が俺の心の拠り所なのは口に出せない。昔の友達の男の子の写真が世界一可愛いなんて、流石に口が避けても言えない。 恵斗はどんな風に育ったのだろう?育った恵斗を見たら俺は幻滅するだろうか?毎晩毎晩そんな妄想をして、もう高二も終わる。 その日は高二のバレンタインディだった。
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