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全身が毛に包まれているが、それは自身の毛ではない。何か他の動物から奪った毛皮を全身に身に着けているのだ。
顔は浅黒くのっぺりとしていて、ソウタの仲間達とはまるで違う形相をしている。
手には見たこともないような道具を携え、それをソウタに向けていた。
そして、次の瞬間――。
――ヒュッ!
バケモノの構えた道具から、再び鋭い棒が飛来しソウタに迫った。
死の恐怖から、ソウタはギュっと目をつぶったが……幸いにして棒はソウタまでは届かず、目の前の地面に突き立った。
(逃げなきゃ!)
我に返ったソウタは、一目散にその場を後にした。
その間も、バケモノは次々に棒を放ってくる。ある棒はソウタのすぐ真横に突き刺さり、またある棒はソウタの行く先すれすれをかすめていく。
ソウタは走った。とにかく走った。
走り続けて、気付けば例の抜け穴をも潜り抜け、いつしか集落に帰り着いていた。
いつの間にか日もとっぷりと暮れている。
(やっぱり、麓にはバケモノがいた! もう二度と山を下りるもんか!)
仲間たちの元へ戻りながら、ソウタはそう決心するのだった――。
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