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「バケモノ、なんだろう?」
挑発的とも取れる響きの声で囁かれた。
聞いたのは東雲一人だろう。
反射的に過ぎ去って行く背を肩越しに睨んだが、相手は既に何も気に留めていない様子でにこやかに指示された席へ向かっている。
「カッコイイ」
と、隣の席から甘ったるい熱を含んだ声が零れた。
今度は軽い舌打ち。
(アイツは人じゃねえ)
心の内を暴露したいが、誰が信じるのかとの思いも強く声は出せない。代わりに色狂いと隣の席の女子へ胸中で毒吐く。
「ねえ、築地君とは知り合いなの」
直ぐに質問が飛んでくる。答えたくもないと態度と視線で表し、不貞腐れた仕草で東雲は深く椅子に座り直す。背後では転校生へ向かっての質問が矢継ぎ早に繰り出されているが、そんな事はどうでもいい。本当ならソイツは人間じゃないと怒鳴りたい所なのに、昨日の異常な経験が告げる事を躊躇わせる。
(バケモノだが、人の敵とは言えねえ)
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