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その夜は、前夜祭としてご馳走と酒
そして吉備団子が振る舞われた。
『おお!吉備団子とは!』
『確かに必要かもしれんな!』
久しぶりの酒にご機嫌の大人達はぽいぽいと吉備団子を口に入れた。
『はる姉ぇ、ゆきもきびだんご食べたい。』
弟のゆきおが着物の袖口を引っ張った。
『駄目だよ。ゆきお。
あれは鬼退治に行ける人だけしか食べれないんだ。』
流が優しくなだめた。
『えー!ならゆきも行く!
おにたいじ連れてって!』
ゆきおがバタバタと暴れだした。
こうなるとめんどくさい。
一つくらい吉備団子を食べさせて大人しくさせちゃおう。
『だめだ。』
私の考えを読んでいた様に、流が私の手首を掴んだ。
その目は真剣で、一瞬たじろいでしまった。
だが、すぐにいつもの流に戻り
『実はあの団子、酒粕を使ってるから
子供には良くないよ。』
『そうなの?』
なんだ。そういうことか。
『いいか?ゆきお。よく聞いて?
これから大人達は旅に出る。
長い長い旅になるかもしれない。』
『旅?おにたいじでしょ?』
ゆきおの問いに流は答えず、続けた
『だからこれからは
ゆきおがはるを守るんだ。出来る?』
『うん!出来る!』
『約束だよ。』
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