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記憶を手繰り寄せてみる。なぜ、所定の位置にないのか。これは僕の責任である。僕は片付けという習慣が付けられずに幼少からたいへんな苦労をしている。家の中でものを紛失することや、役所に出すのに必要書類がどうしてもないなど日常茶飯だ。困ったものだが仕方がない。整理整頓というのがそもそも、僕には向かない。
最後に使用したはいつだったろうか。
あの薄っペラい金属製の軽くて小さな頼りもとないあれ。手のひらに収まる大きさ、白銀色に輝くあれは。あれには透かしの模様が入っていて、どこかの美術館でふと目を止めて求めたものだ。
少々、美術というものに浮かれていたせいかもしれない。
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