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少し寂しい午睡から一人目醒めて、僕は文庫本に手を伸ばした。もう何度も繰り返し読んだ本である。芥川龍之介「或阿呆の一生・侏儒の言葉」この中に一編の小さな作品があって、題を「夢」というのだが、なんだか妙に読みたくなってしまったわけだ。
おそらく彼の小説の中ではさほど有名でないそれを読み終え、ふと、喉の乾きを覚えて宙をみる。
読書している時に茶を飲むのが好きなもので、家の中には常時数種類の茶葉がある。桂華烏龍にしようかなどと思いついて、席を立つ。いや、立とうとした。しまったあれがないではないか。
僕のみだれた机の上のいつもの場所にあれがない。失くして困るものでもないが、こうなっては気がかりだ。
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