錯覚のロリータ

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父はわたしに、ドーリーな、お嬢さんな服を着て欲しがる。 母もまた、襟のついた、主にパステルカラーの、あるいは極端にモノトーンの、スカートにはスリットではなくプリーツの効いた、ガーリーな、彼女の言うところの「品のいい、女性らしい、馬鹿に見られない服」を着せたがる。 そうして、わたしはもう二十八だが、彼らの意向をくんで、そのような服にいつも身を包んで暮らしている。 あての無い暮らしだがそれでいい。昨日も、イタリア人とフランス人のハーフで国籍はイギリスの、都内でお洒落な飲食店をプロデュースしている三十五才の男に口でいかされていた。 髭と胸毛がたっぷりの、料理上手な手練手管の男はシモンという名前で、男友達の男友達として知り合った。 例によって、日本人の、可愛らしい女がたまらなく好きな性癖なのだ。 シモンは本当に、んーま、んーま、と言いながらキスをしたりあちこちを舐める。 わたしは笑う。それを気にせずに「you're so beautiful.you're so beautiful」と繰り返す。 ジェーンバーキンは愛するセルジュゲンスブールのために幼い女の子のような服を着たままセックスしていたという都市伝説があるが、本当なのだろうか。 シモンの様子を見ていると、その手の男にとって、これは本当にたまらないことなのだと解る。 口でいかされていたのには理由がある。彼のは大きすぎて入らないのだ。
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