錯覚のロリータ

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世の中には、自分はまともだと思って本気で暮らしている人達がいる。 いつだったか、関わりが少しだけ発生した、とても感じの良い男性に、紳士的に「あなたのやっていることは錯覚だ」と言われたことがあった。 その男性は英語のオーソリティーで、イリュージョンという表現を何回かした。 わたしには解らなかった、人の人生を錯覚だと言い切れる感覚が。 その人はたぶん自分の事を、無意識に、本当に無意識に、 まともだと思っている。 わたしは、その時、何の根拠もなく、「あなたの知っている世界だって錯覚でしょう」と思ったが、言わなかった。 わたしは息がうまく出来ない。だけれど心地良い。 どんなに誰かから見て変態的な行為であっても、満たされる。 過干渉な親から逃れて、手塚治虫の「奇子」のように、四郎にいちゃんにいかされる救いがそこにある。 どんな目的でも、どんなに未来もなくてもいい、どうせ人は一日一日を生き切るのが精一杯なのだから。
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