錯覚のロリータ

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わたしの人生を錯覚だと断言した男性は、性的な魅力に満ちていた。指も肘も、鼻筋もエロかった。 これがイリュージョン・錯覚なら、そう、わたしの人生は錯覚でしかない。 シモンはわたしの好きなアールグレイティーを入れて、うな重をとったと言った。 「これだけ激しい事をしたあとには、栄養をつけないと。俺は夜に仕事だし」 十畳あるベッドルームに、仕切りの無い七畳のリビングが続いていて、六畳ほどの、キッチンやなんかがある所はあまり日が当たらない作りになっている。最新式の自働で開くごみ箱。 綺麗な明るい黄色の、リネンのカーテン。 恵比寿にこんな住まいを持てるのだから、シモンには、生きる力があると言えるだろう。 わたしにはない。 わたしの親はエスタブリッシュメントで容赦ない。ひとにも己にも。わたしは十五までに疲れ果てた。 そして、十五というのは、性的に充分「応えられる」年だった。
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