錯覚のロリータ

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そしてわたしは二日連続で満たされる。どんなに愛もなくても。 わたしにある種の説教を、悪気なくした紳士的なオーソリティーの男は、理解しないだろう。 分断を感じる。あの男とわたしの生きている世界は違う。 シモンは大きな目を細めて、わたしの脇腹をなぜ、腰をなぜる、わたしは腰を無意識に捻る。サンダルウッドの香りがする。 本当に、外国人男性は香水をよく、強く着けるね。 サンダルウッド……誰か、有名な女性歌手が歌ってた。貴方の肌からいつもサンダルウッドの香りがするの、髪の毛の終わりが当たる首のところ、いとおしくて堪らない、だけど皆が貴方を好きよ。 歌手の名前を思い出せない。その女性歌手の作る曲は、高校の同級生だった男が、まさに「わたしにこんな曲を聴いていて欲しい、そんな女の子であって欲しい」と願った、勝手に美化したわたしの像に合う曲だった。彼の想いも、イリュージョン・錯覚だったのだろう。 シモンがわたしの脇腹をやわらかく噛む。 「you're amazing, so beautiful, so so so beautiful」
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