錯覚のロリータ

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うな重が届いて、受けとるためにバギータイプのインディゴデニムをはいたシモンは、彼の、日本人の好きな仕草であるのの一つ「割り箸を口で割る」をして、わたしを見て 「食べられる?まだ苦しい?」 と言った。マナーとして言っただけだ。それでもわたしは嬉しかった。 苦しかった。いったから。それは彼が、彼の欲望のためにであっても、丁寧にしたあれやこれやのせいだった。 ロリータを好む男性は、ロリータの肌を総ピンクに染めるためなら何も厭わないと、もう知っている。彼らは完全に動物になる。 彼らも必死なのだと、生きるために、自分をごまかし、ストレスのために、人間関係の難しさに、家賃や人件費のために、グローバル資本主義のなかで、生きることの苦しさから一時でも逃れて楽しんで明日を向かえようと、頑張っている。 だからわたしは彼らの体の上で、元々赤茶色の、細い髪質のロングヘアをゆっくり振りながら、射精をしないでは生きられないさがの重みを時々みる気持ちになる。 シモンのは入らないけれど。それでも形だけでもそういう風にして欲しいとシモンが言うときがある。 そして、そうしてやると、彼はいつもよりより満足そうに、より動物的な感動に躍動して、わたしは何かすごいことを見させてもらっている様な気になる。 五分袖の紺色のワンピースが、胸の上まで捲られた、ブラジャーを外された胸を出した状態で、ベッドの上で、起き上がり、息をととのえながら座っていると、シモンが総レースのピンクのフランス製のか弱げなインポートを、まだ赤い右手で拾い上げて、渡しながら 「食べてからシャワーでもどっちが先でもいいよ」 と言った。そこから英語になって「俺は食べてもいいか」と言ったので、英語で勿論と答える。
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