プロローグ

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プロローグ

「ねえ、もう終わり?」  微笑ましい顔を見せながら、彼女は首を傾げてそう言った。 「いやぁ、おかしいな。そんなつもりはないんだけどね」  なんとか絞り出した弁解の言葉は、あまりにもありきたりな台詞で、思わず自分でも笑ってしまった。  だが、彼女はそれ以上に高らかに笑っていた。彼を跨ぎながら気高く。 「なーんだ。期待外れね。少しは骨のある人だと思ったのに」 「ごめん。ごめん。次こそは、ちゃんとやるからさ」 「次? あなた、次があると思ってるの?」 「えっ、ないの?」 「本当、冗談も休み休みに言ってよね。今回が駄目なら次なんてあるわけないじゃない」 「頼むよ。もう1回。いや、もう2、3回はチャンスが欲しいんだ。この通りだ」 「そんな謝り方じゃ、だーめ」 「だったら、降りてくれないか? 頭なら下げる。プライドなんて俺にはないからさ」 「その必要はないわよ。だって、私はチャンスをあげないんだから。もう終わりよ」 「そんなこと言うなって。頼むよ」 「だーめ。あなたは、これでおしまい。さあ、心の準備をして」 「準備? 準備って何の?」 「ただ、目を瞑ってくれたらいいわ」  その言葉に、彼の気持ちが舞い上がった。 「これでいい?」そう言いながら、彼女の言う通りにした。  彼は目を瞑り、気持ちが舞い上がらせた。なんだ。この女も中々のやり手だなと。  しかし、そんな舞い上がったのは一瞬の間だけだった。  体に違和感を感じた時には、もう手遅れだった。彼の声は悲鳴に変わっていた。 「お願いだ。辞めてくれ。俺にはそんな勇気はない。頼む。」 「ここに来たって事は、その覚悟があったということ。それをお忘れですか?」 「本当に頼む! この通りだ! お願いだ! やめてくーー」  彼はそのまま正気を失っていった。 「だから言ったじゃない。覚悟しなさいって」
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