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第02 身体測定
あ~ 朝か今日から本格的に授業が始まるな。
勉強自体は嫌いでは無いけど、環境が余り良く無い気がする。
男で生れた以上、通らなければ行けない試練と思って、頑張るしか無いか。
「寮長さん、お早う御座います」
「お早う、御飯は多くしとくからしっかりと食べるんだよ」
「はい」
寮長さんは本当に良いな、母さんみたいだ。
朝から女子たちに注目を浴びてるけど、距離は置かれてるって感じだな。
此れが耐性の無さって事なのか。
俺は1人、空いてる席へ座り、食事を始めた。
「秋本君、席一緒に良いかしら?」
「はい、どうぞ」
「有難う、私は同じクラスの沢村光【さわむらひかる】、宜しくね」
「こちらこそ、宜しく」
同じクラスか、昨日は気に留めて無かったけど、金髪のお嬢様って感じだな。
美穂を可愛いと言うなら、沢村さんは綺麗って感じだ。
「あ~ 居た居た、私も一緒に良い?」
聞いた覚えの有る、元気な声が飛んできた。
「勿論だよ、美穂」
引きつった笑顔に成る光、それに対してドヤ顔の美穂。
「美穂? 貴方随分と手が早いのね」
「そうですかね? 私は母の言い付けを守ってるだけですけどね」
「それより、誠司少し詰めてくれるかな?」
「ああ、ゴメン」
「誠司・・・!」
「秋本君、私の事も光と呼んで下さい、その代わり私は貴方を誠司と呼ばせて貰います、良いですね!」
笑顔だけど、目が本気で怖い。
「は、はい分かりました」
美穂の笑顔まで引きつり出し会話は続いて行く。
「何よ、自分だって私と同じじゃない」
「違います、私は此れから彼と親睦を深める為の、1歩を進んだだけです」
「それだったら、美穂も一緒です~」
「まぁまぁ、女の娘は怒ってるより、笑顔が良いと思うよ」
「そ、そうですね」
「御免なさい」
素直に反省する2人だが、自分が原因だと思うと先が思いやられる。
はぁ、朝から疲れる、3年間此れが続くのだろうか、考えただけで怖く成ってくる。
「お早う小娘共、今日の1限目は運動測定なので、体操着に着替えるように」
俺は数に入っていないのだろうか、そんな事は無いよな・・・
「先生、俺は何処で着替えれば良いんですか?」
「勿論、此処だが?」
「そうなんですね」
当たり前の様に言い切る担任。
まぁ、中学でも状況は同じだったけど、女子って胸とか成長してるし、見られて恥ずかしく無いのかな。
いやいや、皆が着替えながら俺を注視してる、この状態の俺が恥ずかしい。
今日から、体を鍛えようかな・・・
「どうしよう、男子の裸って始めてみたわ」
「生男子の裸ね」
何故! 彼女達は隠さないのだろう?
「あのう、皆に質問が有るのだけど、俺が一緒に着替えてて恥ずかしく無いのかな?」
「全然、逆に見つめて欲しいかなって感じよ」
「そうね、見て気に入って貰えたら嬉しいわ」
「そうなんですね」
可怪しいのは俺なのか? ここは普通に、彼女達の様に笑顔で着替えるのが正しいのだろうか。
「そうだ、1枚だけ写メ撮らせてくれない?」
「ずるい、私も撮りたい」
「恥ずかしいので駄目です!」
「残念ね」
ここまでの執着心は、中学では感じなかったのだが、彼女達が当然の様に振る舞ってる事が、少し怖く感じる。
何時か盗撮されそうで心配だ、母さんどうしたら良いのかな・・・
運動測定が始まった、男子で有る以上周りよりは成績が良いのは当たり前なのだが、一つ一つに歓声が沸くのは凄く気に成る。
「秋本、大変だな頑張れよ」
無責任な教師だな。
「よーし、2時限目はこのまま、身体測定だ」
「秋本に手伝って貰おうと思うが、小娘達は、彼に胸と体重どっちを測って貰いたいかな?」
この先生は何を言い出すんだろう、それに女子達の満更で無い顔が、不思議でしょうが無い。
「え~ 体重は恥ずかしいな」
「私は胸小さいから・・・体重が良いな」
「秋本、因みにお前が理想の女子はどんなだ?」
「どんなって?」
「胸が大きいのが良いとか、痩せてるのが良いとか無いのか?」
「う~ん、普通?」
「普通か、皆が普通に入れれば良いな」
何で俺が手伝わされるんだ!
それに普通と言ったのだって、誰にも傷ついて欲しく無いからだし、大体容姿が大事なのは分かるが、性格だって重要だと思う。
女子とは、男で有れば誰でも良いと言うものなのか、不思議に思えてくる。
「では秋本には、体重をお願いしようか」
15名の生徒は保健室へと向かった。
「秋本、体重は最後だから頼むな」
「分かりました」
胸じゃないだけ良かったかんだが、この和やかな雰囲気は何なんだろう。
「赤井さん、47キロです」
「こ、此れって普通に入りますか?」
「入ると思いますって、何故上半身裸なの?」
俺は咄嗟に目を逸した。
「それは、少しでも軽くしたいのと、見て気に入ってくれたら嬉しいなと思ってね」
「そうなんですね、普通ですので大丈夫です」
「良かった~ 有難う御座います」
はぁ、列に並んでる娘全員が上半身裸か、そう言う世の中だ仕方が無いのだろう。
全員が普通に入るか聞いてくる、勿論入ると答えて上げなければ可愛そうだと思う、しかしいくら何でも堂々としすぎでは無いだろうか?
俺は少なくとも異性の裸は恥ずかしいのだけど・・・
「白石美穂さん、49キロです」
「ああ、今日の朝食食べ過ぎちゃったからな、何時もは後3キロ位少ないのよ」
「此れでも普通には入るのかな?」
不安そうに聞いてくる彼女、胸は手で隠して欲しいと思う。
「はい、大丈夫です」
しかし、美穂って意外と胸が大きいんだな、形も綺麗だし。
「誠司、見過ぎで恥ずかしいよ」
「あ、ゴメン」
「謝る事では無いよ、有難う」
何故、笑顔で帰って行く、俺なら引く場面だけどな。
やっぱり一番は光か、制服の上からでもスタイルの良さは分かったしな。
ともあれ、此れでやっと終わりか疲れたな。
ああ・・・また着替えが有るのか。
2日目も無事に終わった、暫くは午前中で終わるから良いけど、午後の授業が始まるとキツく成りそうだな。
「秋本君、ちょっと良いかな?」
「はい」
俺は、教室で帰宅の準備をしてる時に、声を掛けられた。
短めの髪で癖っ毛の有る娘だ。
「私は木下可憐【きのしたかれん】、可憐って呼んでね」
「では、俺は誠司で良いですよ」
「有難う、ちょっと相談が有るのだけど、屋上に付き合って貰って良いかな?」
「良いですよ」
「誠司、帰らないの?」
俺と可憐が教室を出た所で、美穂に声を掛けられた。
「美穂悪い、可憐が相談に乗って欲しいそうだから、先に帰ってくれるかな」
「は~い、可憐さん、抜け駆けは許さないからね」
「それは、お互い様でしょ」
抜け駆けか、そんな事はあり得ないだろうと思いながら、可憐の後を付いて行く。
この学校の屋上にはベンチまで有るのか、意外と凄いんだな。
「誠司、座って」
「うん、それで相談とは?」
「誠司はゲームが好きって言ってたでしょ、それで攻略出来無いゲームが有ってね」
「成程、因みにどんなゲームなの?」
「う~ん、ジャンルはBLかな、どうしても主人公の少年の気持が分からなくてさ」
堂々と自分の趣味をさらけ出してる可憐、普通な感じで話してるが、オタクってやつなのだろうか。
確かに、最近はBLとか美男子ゲーム流行ってるからなぁ、俺はやった事無いんだけど。
可憐の質問に答える様な形で、攻略の説明が始まった、まるで尋問されてる様な気分に成ってくる。
「う~ん、今一分からないわ」
「誠司、今日の夕食が終わったら、私の部屋に来てくれない?」
「え?」
「大丈夫、絶対に変な事はしないからさ」
真剣さは伝わって来るが、少し危険な予感もする。
「信じて良いのかな?」
「うん、夕食も一緒に食べましょうね」
母さん、俺は大丈夫なのでしょうか?
可憐の笑顔を見る限りは大丈夫そうだな、オタクっぽいし3次元などには、興味が無いのかも知れない。
可憐は、わざわざ迎えに来てくれた。
「誠司、開けるわよ」
「今、行くね」
待たせるのも悪いので、俺は直ぐに部屋から出た。
そう言えば不思議だったのだが、何故部屋に鍵が付いてないのだろう、不用心では無いだろうか。
「やっぱり、男の子は凄く食べるんだね」
「ははは、そうだね」
俺から見れば、女子は良く少ない量で持つなと思う。
「お二人さん、お邪魔しますね」
「私もお邪魔しま~す」
美穂も光も少なめなんだな。
「所で、可憐の悩みは解決したの?」
「う~ん、半分位は解決したかな」
「そう、早く解決出来ると良いね」
「有難う」
美穂は結構優しい所有るんだな。
可憐も何方かと言えば可愛い感じか、ショートな髪が似合ってるし、瞳が少し茶色いのも可愛いな。
「ご馳走様」
「私もご馳走様」
「また明日な、美穂、光」
「おやすみ~」
「お休みなさい」
お休みじゃ無いんだよなぁ。
「誠司の部屋は201号室でしょ、私は205号室だから覚えておいてね」
「分かった」
俺は可憐に進められて部屋へ入った。
意外とサッパリしてる部屋だ、女子の部屋は初めてでは無いけど、良いセンスをしてると思う。
「今、パソコンを立ち上げるから、ベッドに腰掛けて待っててくれるかな」
「うん」
本当にBL何だな、棚には美少年物とか恋愛物とかが多く並んでいる。
「準備出来たわ、因みに主人公は年下の子の方よ」
「分かった」
俺と可憐は、あれこれと相談しながらゲームを進めて行った、やり始めたらのめり込んでしまうのが、俺の悪い癖だろう、何時の間にかに可憐よりも俺が嵌っていた。
「誠司、凄いわね良く進んでるわ」
「有難う」
「椅子に座って良いわよ、私シャワーを浴びてきちゃうから」
「うん、分かった」
ん? シャワー?
「可憐待って、それなら俺帰るよ」
「気にしないで、直ぐに戻るからゲームをお願い」
「分かった」
可憐は普通に行ってしまったが、此れで良いのだろうか、良く無い気がする。
しかし、瀬川先生の言葉だと、心の耐性を付けて欲しいと言う事だ、此のゲームはある意味うってつけかも知れないしな。
時間も19:30か、出来る所までは協力して上げよう。
「お待たせ、御免ね」
「いいや、大丈夫・・・可憐、下着が透けてるんだけど良いのかな」
「ああ、此れが私の寝る時の服装だからね」
「そうなんですね」
恥じらいとか一切ない可憐に対して、俺は戸惑いを感じた、これが普通なのだろうか、俺は男として認識されて無いから良いのだろうか、分からない。
「どう? 何処まで進んだ?」
うう、可憐が近すぎる、意外と有る胸が当たってるんだけど、可憐は気に成らないのかな。
「ああ、結構進んでるね」
「今思ったんだけど、此の年上の人の気持が分かる様な気するわ」
可憐よ、それ主人公じゃないし、当てた胸を動かさないで欲しい。
純粋なオタクじゃないのか、それともキャラクターに成り切っちゃってるのか、とにかく可怪しい。
耳元で囁くのも可怪しいだろ。
「ハァ、誠司、此のセリフってエッチよね」
「うん、少し過激だね」
「私も何だか、おかしく成ってきちゃいそうだわ」
「可憐?」
可憐は本気だ!
「はぁ、誠司、こう言う時はどうしたら良いの?」
「ちょ、ちょっと俺にはまだ分からないかな・・・」
「お願い少しで良いから胸を触って、ゲームと同じ様に耳元で何か囁いてみて」
「そんな、行き成り過ぎるよ」
「お願いよ、誠司・・・」
「可憐、そう言う事はもっとお互いを知り合ってからにしようよ」
そう言いながらも、可憐の胸を揉んでしまってる自分が情けない。
「ねぇ、キスしよ」
「ゲームの影響受け過ぎだよ、今日は此処までで、これから先協力するのやめるよ?」
唇を近付けて来た、可憐の動きが止まった。
「ふぅ~ 分かったわ来てくれて有難う、此れからも宜しくね」
「うん、こちらこそ宜しく、それじゃお休み」
「おやすみ~」
俺は逃げる様な形で自分の部屋へ帰った。
「ちぇ、もう少しだったのにな~」
そんな可憐の言葉は、勿論聞こえては来なかった。
母さん、やっぱり隙を見せると駄目です、女性は怖い者なんですね。
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