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以前付き合った少し年上の男は外面の良さと正反対に暴力的な人だった。
その人と別れたのは、僕が大怪我をして保護されたのと、それが原因でその人が逮捕されたからだ。今でも悪い人ではなかったと思う自分が悔しい。
本当に、「恋」は人をバカにする。
結局、僕は決まっていた大学を一年休学するはめになった。
そんな目に遭ったのに、やっぱり恋は人をバカにする。
どんな薬でも治らない、自分のタイプはそんな黒い噂すら蹴散らしてしまう。
ただ、どうしても年下だと思うと信濃のことがお子様に見えてしまうし、そんな暴力的な噂が絶えない彼をどこかで前の人と同じだったらと勘ぐる。
それでも、どうしようもなくバカみたいにタイプには弱い。
「そんなわけで、信濃君とは付き合えません。 このままの関係でいいなら……」
あわよくばお友達からなんて考えをにじませながら告げる僕に、信濃は
「別に、焦らねえ」
と一言。
「ちなみに、幸前が年下だからな」
「へ??」
何とも間抜けな返事をしてしまったものだ。
「いや、だからお前が年下。 そこだけは訂正しとく。 俺、一度入った大学を辞めてるから。 噂の出所はそれが原因。 2年遅れで入り直してるから」
「なんで?」
「……確かにいろいろあってちょっとやらかしたけど、それがきっかけで進む道を考え直しただけで。 正直、好きな奴に暴力振るう気持ちは理解できない。 まあ、とりあえずこれから俺のことを知って貰えたらいいんじゃね? そのうちお前のことを振り向かせてみせるし?」
しれっと言った信濃に一瞬とドキッとしたのは当分内緒。
僕が過去の人を吹っ切るのも、きっと、そう遠くない話。
……かもしれない。
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