過去の人 未来の人

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 やたらと突っかかって来る奴がいる。いや、突っかかって来るというよりは纏わりついてくる奴の方が正しいのかもしれない。  親友曰く、 「俺様だって聞いていたけど、あれじゃただの構ってちゃんじゃん」 らしい。人付き合いの苦手な僕を思いやっての言葉だろう。  信濃(しなの)(たまき)。  どちらかというと学校では怖がられている部類に入るだろう。  大学生にもなってそんな噂を真に受けて、それはどうだと思うが、致し方無い。  どこかの大きな族のトップだったとか、ヤクザの息子だとかまことしやかに噂され、派手な容姿と悪い目付きが噂に拍車をかけた。  人を見かけで判断するなんて、と言っても世の中所詮そんなもんだ。  噂が流れたころ、彼が何度か否定したのを僕は覚えているが、いつの頃か否定する事すらやめてしまっていた。きっと煩わしくなったのだ。  その頃からか、信濃は僕に 「付き合え」 というようになった。もちろん、定番通り、 「どこへ?」 と聞いた僕。だからその付き合えではなくではなく、好きだから付き合って下さい、っていう意味だってことは確認済み。  分け隔てなく接する僕に興味を持ったのかもしれないし、自分に怯えない僕が珍しかったからかもしれない。  僕も信濃のことは嫌いじゃない。  嫌いじゃないけれど、付き合いたいかと言われたらよくわからない。
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