永遠の誓い 11

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永遠の誓い 11

 寿司屋のカウンターに座ると、柊一はあの日のように腕時計をスッと外した。  そうか、カウンターに座る時は腕時計やブレスレットを外すのがマナーだったな。高級寿司屋のカウンターは高級な一枚板で作られているので、傷つかないようにという優しい配慮が、相変わらず君らしい。  美しい所作に見惚れていると、柊一と目が合った。 「どうした?」 「あの……先ほど……歌舞伎座前で思い出しました。初めて歌舞伎をご一緒した時の海里さんの和装姿、とても素敵でした」 「う……あれは瑠衣が不意打ち(サプライズ)も時には大切だなんて言うから……もう忘れてくれ」  あれは柊一との真面目な付き合いを初めたばかりの頃だ。柊一からの誘いを待つ、そわそわと落ち着かない日々だった。  歌舞伎座に誘われ有頂天になり、だが何を着ていけばいいのか分からず、瑠衣に相談したんだ。    「いいえ、忘れられません。しっとり匂い立つような和風の美丈夫ぶり。今でも色鮮やかに思い出せます。明るい薄鼠色紋付の着物と羽織に袴、角帯……完璧な出で立ちで、僕は……」  柊一の頬が薔薇色に染まる。 「その続きを聞かせて」 「その……見惚れてしまいました。それから信じようと思えました」 「信じるか……君に信じてもらっているのは、日々感じているよ」  そう告げると、柊一は更に薔薇の色を濃くした。 「流れ星が見えるのです。海里さんと過ごしている日々は、願いが叶う魔法で溢れています。あっ、声が大きかったですね。すみません」  寿司屋のカウンターで思わず熱っぽい声を張り上げたことを恥じていた。  そんなこと気にしなくてもいいのに。 「大丈夫、少しの間……貸し切りにした」 「え? 何故、そのようなことを」 「何しろ君との久しぶりの外出デートだからね、周りを気にすることなく楽しみたいのさ」 「か、海里さんは……僕に甘すぎます」  柊一が、珍しく日本酒を口にして、そっぽを向いてしまった。 「柊一、大丈夫だよ。さぁこちらを向いて……今は誰もいないよ」  人払いもした。 「あ……」 「気に入らなかった?」 「いいえ……いいえ! 今日も……まるでおとぎ話のようで……雪也の健康そうな姿を垣間見られただけでも最高に幸せなのに……お揃いの白い燕尾服を誂えただけでも倒れそうな程幸せなのに……こんな素敵なお店を貸し切りにして下さって……だから、僕は……」    そこまで言って、柊一は面映ゆい様子でもう一度日本酒をそっと口に含んだ。  少し酔わせてみたくなる。その潤んだ瞳……に酔いしれたくなるよ。 「可愛いよ、その続きを教えてくれないか」 「こ、ここでは無理です」 「では中庭はどうだ? あの日のように……寄り道をしないか」  柊一の黒曜石のように美しい瞳が、夢を見るようにうっとりと瞬いた。    
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