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霧の浪漫旅行 11
澄ました顔で、瑠衣がさり気なく俺と手を繋いでくれる。
これは嬉しいぞ。
瑠衣だって……本当は照れているくせに、ポーカーフェイスを貫こうとするのが、可愛いよな。
それに引き換え、後ろを歩く海里と柊一くんは、互いに見つめ合って完全に薔薇色の世界だ。
彼らは……日本では、こんなこと絶対に出来ないのだろう。
互いに旧家の名と歴史を背負って生きているから。
だが、ここでは……誰も二人を知らない。
だからもっともっと――心を解放していいよ。
俺と瑠衣が守ってあげるから。
二人の新婚旅行を、心から楽しんで欲しいから。
「アーサー、二人は本当にお似合いだね」
「あぁ、華やかな海里はエキゾチックな王子のようだし、少し大きめなダッフルコートに埋もれる柊一くんは、あの日の瑠衣のようにボーイッシュな少女のようだ」
「確かに……僕は今……感無量だよ」
東洋人は相変わらず若く見えるな。
俺の横を歩く瑠衣は、もうあの頃のように少女と見間違えるようなことはないが、あの頃より磨かれた……楚々としたノーブルな美しさに包まれていた。
「さぁ、着いたよ。ここで食べよう!」
アップルマーケットの一角にあるクラシカルな内装の、老舗ハンバーガーショップに入った。この店のブリティッシュ・シックな雰囲気が落ち着くんだよ。
それに、ここにならホットレモネードもあるからね。
何よりここは俺と瑠衣のとの思い出の地だ。
「へぇ、素敵なお店だな」
「落ち着くだろう。マーケットのハンバーガーは、出来たてのパテや揚げたてのポテトが絶品なんだ」
ハンバーガーと言えばファストフードのイメージが強いが、ロンドンでは立派な食事として定着している。
オーダーしてから焼かれるジューシーな肉を挟んだバーガーと、こだわりの味付けのポテトを味わいながら、気心知れた仲間と楽しむのがロンドンっ子の日常なのさ。
学生気分の俺たちには、今日は高級レストランは不要だろう?
「海里、焼き加減は? トッピングはどうする?」
「そうだな。柊一、君はどうする?」
「えっと……僕は……んん、迷いますね」
「君はcheeseが好きだから、挟んだらどうだ?」
「あ、いいですね!」
「じゃあClassic Cheeseにしよう。Skinny Fries(細長いポテトフライ)も頼んでみようか」
「はい! 美味しそうですね」
「よし、まずはレモネードで喉を潤して」
「はい、分かりました」
こちらが恥ずかしくなるほどの、至れり尽くせり。熱々ぶりに、俺も負けていられない。
海里とは昔から張り合いたくなるんだよな!
「瑠衣、君はどうする?」
「くすっ、僕は……そうだ、アーサーが見立て。君は僕の好みを熟知しているよね」
「瑠衣~♡」
やはり俺の瑠衣は、天使だ!!
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