5386人が本棚に入れています
本棚に追加
2022年 特別番外編『Happy Halloween 海里&柊一Ver. 』
「柊一、今日はハロウィンだよ。去年は可愛いナースの姿になってくれて喜ばせてくれたね」
「え! あっ……あれはもう忘れて下さい。恥ずかしいです」
「ふっ、そうかい? 俺はミイラ男になれて楽しかったのに」
海里さんは朝から上機嫌だが、僕はナースの服装で海里先生に包帯を巻いたことを思い出して、耳まで赤くなってしまった。
「ハロウィンの魔法は、僕には刺激が強すぎました。もう無理ですよ」
「そうかい? じゃあ今年は自粛しようかな」
「え……そんな、せっかくですから仮装して下さい」
僕はともかく、海里先生の楽しみは尊重したい。
「ふっ、どんな姿になって欲しい? 柊一の仰せのままに変身するよ」
すると僕たちの会話をニコニコと聞いていた雪也が、手を挙げた。
「はい! はい! 今年は僕が海里先生の手術のお手伝いをしたいです!」
「え? 雪也が」
「兄さまも一緒にしましょうよ。去年のお衣装があるんでしょう?」
雪也ってば、僕にまたナース服を着せようっていうの? あれは資格がなくても着られるのは分かったけれども、足下がスースーして恥ずかしい。
「あれは雪也が着るといいよ」
「本当ですか! じゃあお借りしようかな? 海里先生、僕たちせっかくだから怪しくブラックなドクターとナースになりません?」
「ははは、雪也くんはノリノリだな。しかし黒い手術着か。そんなの売っているかな?」
壁際で話を聞いていた桂人さんがニヤリと笑う。
「そんなのお安いご用だ。染料で染めておきますよ」
「流石、有能な執事だな。ついでに患者役の怪物も調達しておいてくれよ」
「くくっ、いいですよ」
「楽しそうですね。僕は観客に徹します」
夜になり、海里先生は黒い手術着姿に、雪也は黒いナース服に変身した。海里先生の明るい色の髪と逞しい身体に映えて、大人っぽくて素敵だ。雪也もさまになっているね。
「海里さんとても似合っていますよ。フォーマルな手術着ですね」
「フォーマルと表現するなんて、君の言葉は相変わらずこんな時でも濁りがないね」
「兄さま、兄さま、僕はどうですか? 僕、可愛いですか」
雪也は恥ずかしがりもせず、小首を傾げてニコッと微笑んだ。
その姿が溌剌としていて、黒いナース服なのに白衣の天使のように見えて、手放しで褒めてしまったよ。
「ゆきは天使みたいだよ」
「もう~ 兄さまは僕に甘々ですね」
「雪也、メスを」
「はい!」
雪也が手渡したのは、ケーキカット用のナイフだった。
ワゴンには桂人さんが用意した……世にも不思議な色のケーキが置かれていた。流石に海里先生も眉をひそめる。
「ところで……どうしてこんなまずそうな色なんだ? 生クリームが青いなんてありか」
「特別な漢方で染めたんですよ」
「……おどろおどろしいな」
「ははっ、怪物を調達してこいと言われたので、腕によりをかけて作りましたよ」
「くくっ、桂人は完全に遊んでいるな」
「楽しいですね、なんの催しだか知らないが愉快だ。なぁテツさん」
「あぁ、あれを毒味するのは柊一さんだと思うと、気の毒だが」
朗らかに笑う桂人さんの横には、いつの間にかテツさんもやってきて笑っている。
「僕のことなら、大丈夫ですよ。どんなお料理でも美味しくいただきます」
「やった! 海里先生、手術の続きをしましょう」
「あぁ、そうだな」
僕は椅子に座って、その様子を見守った。
大切な人たちが集い、和やかな時を過ごす。
イベントも楽しいが、それが一番幸せなことだ。
「さぁどうぞ」
ケーキは苦くて食べるのが大変だったけれども、食べるとポカポカと身体が温まった。
「ジンジャーケーキですよ。柊一さん」
「だからなんだね、こんなにポカポカなのは、今なら何でも出来そうだな」
「ははっ、あとはお二人の時間ですよ」
桂人さんに支えられるように、僕は一足先に部屋に向かった。
「柊一さんも見ているだけでなく、羽目を外すといい」
桂人さんが僕に濃い紅茶を1杯。
「これで絶対に眠れなくなりますよ」
桂人さんがウィンクして、甘く微笑む。
口に甘いチョコレートを放り込まれる。
「さぁここからの主役はあなただ!」
大人のハロウィンはこれからだと、秘めやかに囁かれドキドキした。
急に身体が火照ってきたので、自分から衣類を脱いで裸になり、そのままベッドに潜り込んだ。
枕元には、白い包帯を置いて……
僕のブラック……待っています。
これで僕を束縛しちゃって下さい。
あとがき
****
Happy Halloween!!
控えめな慎ましい柊一も最後には崩れましたね。
桂人ってば〜そのチョコってまさか媚薬入りじゃ🤭
この後の海里先生の幸せそうな顔を想像して下さい💕
ちなみに去年のハロウィンSSはこちらです
https://estar.jp/novels/25598236/viewer?page=436&preview=1
最初のコメントを投稿しよう!